EXECUTIVE DIALOGUE
  • EXECUTIVE

マーケットプレイス機能の導入について

  • Kyohei Sato
  • Junichi Katori
2023.10.26
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2023年6月、la belle vieはフラッシュセールサイト「GLADD」において<マーケットプレイス機能>の導入を開始。この機能を導入することで、従来の期間限定のライブ感溢れるフラッシュセールはそのままに、パートナーブランドとの在庫連携による常設の商品展開が可能になった。今まで以上に豊富な品揃えを実現し、“目的買い”といったカスタマーニーズにより応えていく。

その<マーケットプレイス機能>を構築するためのSaaS(※)プラットフォームを提供しているのが、Mirakl(ミラクル)株式会社。フランス発のユニコーン企業で、欧米を中心にグローバル企業やブランドが同社のマーケットプレイス・プラットフォームを採用し、売上増加に成功。大きな注目を浴びている。日本法人は2022年5月に設立され、「GLADD」が日本における同社プラットフォーム採用企業の第一号となった。

今回、そのMirakl社の代表取締役社長・佐藤恭平さんと、la belle vie取締役副社長執行役員・香取純一による対談が実現。Mirakl社のマーケットプレイス・プラットフォーム導入のきっかけや、マーケットプレイスによる成長予測などといった話を尋ねた。

※SaaS・・・「Software as a Service」の略。クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスを指す。Gmailなどのウェブメール、ZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議システムも「SaaS」に該当する。

対談メンバー

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    佐藤 恭平

    Mirakl株式会社
    代表取締役社長
    1998年SAPジャパン入社後、 eコマース事業の立ち上げに従事。 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)戦略コンサルタント、 日本マイクロソフト業務執行役員を歴任後、 SAP再入社、 VP・インダストリー・バリューエンジニアリング統括本部長等を経て、 VP・インテリジェントスぺンド・ビジネスネットワーク事業本部長。 2022年Mirakl株式会社に入社。 代表取締役社長に就任。 慶應義塾大学総合政策学部卒、 同大学経営学修士(MBA)。 ダートマス大学経営大学院交換留学。
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    香取 純一

    la belle vie株式会社
    取締役副社長執行役員
    NYの大学でファッションマーケティングを学んだ後、国内のアパレル企業でMDを経験。創業メンバーとしてバイイング&マーチャンダイジング部を率いて様々なビジネススキームを構築してきた。
la belle vieがMirakl 社のマーケットプレイス・プラットフォームを導入したきっかけをお教えください。
香取 ちょうど2022年の4月ごろ、弊社のファウンダーの方を通じて、佐藤さんをご紹介いただいたのがきっかけでした。同年5月には、佐藤さんと直接お会いしました。まだ日本のMirakl社には、佐藤さんしか社員がおられない時でした。
佐藤 フランス発のMirakl は、マーケットプレイステクノロジーのリーダー的存在として世界で認知されています。世界の何百社ものリーダーたちが、すでにMiraklのマーケットプレイステクノロジーとシステムを採用して迅速にマーケットプレイスを立ち上げ、eコマース収益の推進に成功しています。Miraklの日本法人は2022年に設立され、ちょうどその頃、香取さんにお会いしました。
お会いされてのお互いの第一印象はいかがでしたか?
佐藤 最初に香取さんにお話させていただいた時に、海外事例をご紹介したので、すぐMiraklのことをご理解いただけました。ただ当時、香取さんは別のプロジェクトを進めておられた最中で、「面白いのですが、今ちょうど別のことをやっていて・・・」というお返事がありました。我々としては「他にプライオリティの高い案件がおありになるのかな」というニュアンスで受け取りました。「ではそれが落ち着いた頃に再度お話を」と申し上げたところ、「それでいいのですか?」と逆にお話をいただいて。興味を持っていただけたのだと思って、「じゃあ来週もう一度、お伺いさせてください!」と。
香取 大きな別案件があって、優先順位を考慮しなくてはならなかったんです。そこに割り込む余地はない、と佐藤さんは思われてしまいましたよね(笑)。
佐藤 でも、嬉しかったのは「それでもいいのですか?」と、言っていただけたことです。それだけ我々の持っているソリューションに可能性を感じていただけたのかなと思ったので、すぐ御社に再訪するお約束をさせていただきました。そこから定期的にお会いして、契約を締結させていただきました。
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Mirakl 社のマーケットプレイス・プラットフォームを、日本で最初に採用した企業ということになりますね。
佐藤 la belle vieさんが、ファーストペンギンですね。ただ、世界ではすでにマーケットプレイスがトレンドになっています。Miraklの海外事例の一つとして、フランスの有名百貨店「ギャラリー・ラファイエット」があります。そこのECにおけるマーケットプレイスに出店するブランド企業は、自分たちの商品はギャラリー・ラファイエットで販売する価値があり、その品質基準を満たしていると自負しているようなものが多い。写真の品質や商品説明にもこだわるため、Miraklのシステムでは、そういったクオリティの部分を細かくチェックできるようにしてあるんです。そのような点も評価いただき、グローバルのMiraklではファッションや百貨店業界からの支持も高いです。
香取 私は今の時代、ECサイトにとって、グロースドライバーになる要素は3つあると思っています。1つめがソーシャルマーケティング。初期のフラッシュセールは、口コミで「何か面白いものやっているよ」というような、バイラルマーケティングになる種があって、お客様同士がメールのやりとりによって、クローズドな紹介制という形でコストがかからずに拡大していった経緯がありました。現在は、スマートフォンが普及し、アプリが出てきて、ユーザーが使うデバイスはPCからスマホに変わっていきました。クローズドというよりは、オープンな環境で、ただマスではなくソーシャルという形で種を与えて、そこからまたソーシャルで広げていっているようなサービスが成功している傾向にあります。

もう一つが、インターナショナル・エクスパンション。自国だけでなく、他国にオフィスを構えたり、インターナショナルシッピングを行ったりと、サービスの対象国を広げていくという点。そして最後が、マーケットプレイス。弊社で展開している「GLADD」や「GILT」のようなフラッシュセールでは、ベンダーが抱えている在庫を弊社に送っていただければ、それを撮影・販売から発送まで一括でセットアップしており、在庫問題への強いソリューションが確立されています。でも、「GLADD」の誕生から14年が経ち、期間限定のフラッシュセールという形は残しながらも、新たにマーケットプレイス機能を採用した「在庫連携」という形で、ベンダー様の持つ在庫を「GLADD」上で常設販売できるようにしていくという点です。この3つのグロースドライバーのひとつが、ちょうどMirakl社のマーケットプレイス・プラットフォームということになるわけです。弊社が行っていきたい事業戦略に合致した形になります。
佐藤 率直に、嬉しいです。3つのうちの一つに数えていただいているだけでも、光栄です。SaaSをやっていると、システムを提供して終わりになりがちですが、そこから先をお客様とともにどうやって伴走していくか、そこをちゃんとやっていかなきゃいけないと今のお話を聞いて改めて思いました。我々のソリューションは日本では初めてですが、海外ではファッションを含めて色々なお客様にご利用いただいているので、いかにそれを使いこなしていただくかというところで、我々もお手伝いできればと思います。
マーケットプレイスプラットフォームの導入により、フラッシュセールサイトである「GLADD」や「GILT」に登場するブランドには、どんなメリットや付加価値が生まれると予想されますか?
佐藤 「GLADD」の場合は、まずは既存のお取引があるブランドさんからマーケットプレイスを始めていますから、彼らとしては新しい取引形態が増えて顧客リーチできる機会が増えるとみる可能性が高いです。新規のブランドさんにとっては、「GLADD」で売れること自体が非常に大きな魅力に映るでしょう。ブランドさんの商品を受け入れる御社側としても、在庫リスクなどなく品揃えを拡張することができ、色々なことを実行に移せるのかなと思います。
香取 「GLADD」や「GILT」で現在販売している商品の多くは、ベンダーの倉庫に保管されている1〜2年前のアーカイブです。ところが在庫連携ができると、今年の新規商材もリアルタイムで販売できる。ブランドさん的にも消化が早ければ早い方が良く、前倒しで消化していきたいという気持ちがあるので、そういう点でメリットを感じてもらえると思います。
マーケットプレイスを開始するにあたって、具体的な戦略はあるのですか?
香取 フラッシュセールというと「衝動買い」「ウィンドウショッピング」という面が、お客様の需要を喚起している部分があります。お客様や商品が増えてくると、お客様の目的買いに対応していく必要がありますが、フラッシュセールではセール期間が過ぎてしまうと商品の掲載がなくなってしまうため、それができませんでした。マーケットプレイスで在庫連携が実現し、商材が一定期間しっかりあって物量が多くなると、目的買いに対応することができるようになります。目的買いと言うニーズに応えるためにまず検索機能を充実させ、欲しいものを最短距離で選べるようにしたり、ブログなどのコンテンツを作成してトレンドなどの特集を組み、トレンドの需要喚起をすることで売り上げをとっていくことができます。ほかにも、お客様の好みを捉えやすくなるため、パーソナライゼーション機能や、レコメンデーション機能も充実させることが大事だと思っています。
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マーケットプレイスプラットフォームを導入したことによって、これからのla belle vieはどのように成長していくと思われますか。
佐藤 まだ日本では提供が始まっていないのですが、グローバルのMiraklでは、Mirakl Connect(ミラクルコネクト)という仕組みが構築されています。例えば、ギャラリー・ラファイエットに出店しているとあるブランドさんの商品を、la belle vieのMDさんが見て、「これを『GLADD』でも売りたい」と思ったとします。そこでMiraklはそのブランドさんにお繋ぎすることが可能です。他にも、このMirakl Connectに登録している海外ブランドで、日本にぜひ出荷したいと希望しているもののリストをお出しすることもできます。つまり、MDのやり方に新たな方法が加わる可能性があるかもしれません。

また、すごく大きな言い方をすると、Mirakl Connectのような我々の最新ソリューションをしっかり提供しながら、我々の直接のお客様であるla belle vieさん自身にハッピーになっていただきたいんです。もっと言うと、その先のla belle vieのお客様にまでハッピーになっていただきたい。ここまで考えたいなというのが本心です。我々はSaaSベンダーであり、我々自身が例えばファッションビジネスをしているわけではないですが、我々のプラットフォームを通じて、お客様のお客様にまでそのハッピーをお届けできたらなと思っています。la belle vieさんがマーケットプレイスで大きなデータを獲得したところで次に何を考えるかを予測し、「まさにこういうものが欲しかった」と言っていただけるような製品やソリューションを継続して提案していくのが我々のミッションだと思っています。
世界に注目されており、頼もしい印象のMirakl社ですが、日本法人は現在10名ほどになりましたね?
佐藤 そうですね。でもメンバーはみんな、Miraklのソリューションで世の中を変えられる、もしくは、変えようとしているお客様を支援できる、と思っている人々です。我々のチームは、横のつながりを大切にしていて、それぞれが足りない部分を助け合ったり、一緒に成長したりと、非常にいい関係を築けています。弊社は採用時に、同じ価値観やマインドを持っているかどうかを見るんです。スキルは後でキャッチアップできますし、一緒に働いてハッピーかどうかが重要だと思っています。ただ、今後人数が増えていくと、各部署で細分化され、目指すゴールが違ってきてしまうことが予想されます。「共通のゴールはなに?」という点を意識することは、すごく気をつけるべきだと思いますね。

Mirakl創業者兼共同CEOのAdrian Nussenbaumは、僕らのことを羨ましいと言うんです。彼は起業家なので、大きな会社よりも、小さな会社で気のしれた仲間とワイワイガヤガヤとやっていくことの方が性に合っているようです。日本には昔のその姿があるみたいなことをポロっと言ってフランスへ帰ったりしていましたね。日本で100人まで増えたらすごいですね(笑)。
香取さん、最後に一言お願いします。
香取 今回Mirakl社のマーケットプレイス・プラットフォームを採用させていただいたことは、フラッシュセール、すなわち「GLADD」「GILT」自体を進化させていく上での重要なステップだったと思います。もちろん、企業として新しいサービスを増やしていくのも大切ですが、既存のサービスをお客様が求めるような形に進化させていくことも大切で、その部分に今後もしっかりアンテナを張っていく必要があると強く感じています。